「午后一時の怪談」
『一口メモ』
ある平凡な町の中。
三平にとっては真にいけていない日だった。
犬には噛み付かれ,洋子にはつっけんどんにされ,電車の中では足
を踏まれる,課長には怒鳴られる,食堂は満員で違うグリルで食べたら財布を落としていた…。
と,そのとき三平はその日の朝に戻ってしまう。
またまた,犬には噛み付かれ,洋子にはつっけんどんにされ,課長には怒鳴られる,食堂は満員だったが,グリルに入る前に財布を
確認すると,やっぱりない…。
と,またまたまた,三平はその日の朝に戻ってしまう。
犬には応酬し,電車の中では足を踏み,課長に呼ばれたそのとき,時間を戻っているのは三平だけではないことが判明する。
学会で
は何かの拍子に時間に付いた傷がレコードの針のように元に戻る現象ではないか,と発表する。
その表紙とは誤発された水爆の爆
発の衝撃ではないか,と予測された。
やけくそになった三平は洋子の部屋に押し入り,事をいたす。
しかし,そのときに限って午後一時を過ぎてしまった。
気が付いたときは
彼らは一年時間を進んでいた。
水爆による衝撃でレコードの針が飛んでしまったのだ。
そんな時間スキップを起こしてしまったために
三平君は…。
『図版使用書籍』
手塚治虫大全(1997年)